「どこにいる?」
「ちょっと職場にね。何か用―」
「おまえが必要なんだ。お父さんと私はもう疲れてるよ」
「疲れて……何に?」
「これにだ!ええと―おまえのことじゃなくて、ただ……この状況にだよ。何か月も帰ってきてないじゃないか。ずっと会ってないよ。ねえ、どれだけ辛いか分からないか?一体何がそんなに重要なんだ?」
「パパ、私―」
「もう子供じゃないのは分かっているよ、だから年の話はやめてくれ―」
「そんなこと言おうとしたんじゃないってば。私が言いたかったのは、お父さんたちが想像するより重要な仕事をしてるってこと―」
「おや、じゃあこれが想像しておくべきことってことなのか?いつこれが論点になったんだ?」
「そんなこと言ってない、そういう意味じゃない!」
「じゃあ何の話なんだ、テレサ?どこにいるんだ?なんで訪ねてこない?」
「やめて―怒鳴らないで、お願いだから、全部そのうちよくなるよ、お父さんたちにもずっとお金を送―」
「おまえの金なんて欲しくないんだ!あの胡散臭い銀行からの怪しい送金の履歴じゃなくて、おまえに私達の生活に戻ってきてほしいんだ、くそっ!おまえのところの銀行は一体何なんだ?聞いたこともないぞ!ググっても何も出てこない!政府か何かで働いてるのか?」
「お願い、叫ばないで―」
「おまえがどこにいるのか教えたらやめるよ!私達は自分の娘がどこにいるか分からないんだ!」
「分かった、インディアナだよ、最寄りの町はブルーミントン、ちょっと―待って、くそっ―」
「『待って、くそっ』がどうした?」
「行かなきゃ。誰か来た―」
「かけ直してくれ、テレサ、おまえがいなくて寂しいんだ―」
「誰と話していた?」
「あ、こんにちはウェルナー博士―」
「誰と話していたかを聞いているのだが?」
「誰って―私の―父?私の父、電話してきて、ご存知でしょう、私の家族―」
「我々の所在地を君の父親に話したのか?」
「え―ええ―」
「これは財団の携帯電話ではないな。ロックウッド、規則は知っているだろう、サイト外に年間休暇で出る以外はこれは私物ロッカーに仕舞えと」
「知って……います」
「ああ、そうだろうな」