アイテム番号: SCP-CN-1986
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-CN-1986は収容の有効性が確認不可能ですが、全てのサイト-CN-██の元職員はその管理者により記憶処理され偽の身元が付与された後、どの財団サイトからも離れた一般の職場に配置されます。サイト-CN-██に収容されていたアノマリーはサイト-CN-██、サイト-CN-██およびサイト-CN-██に移動されました。サイト-CN-██の社屋半径5km以内だった区域には、いかなる財団職員も立ち入り禁止し、サイト-CN-██に勤務していた人物(以下SCP-CN-1986-1)との交流も禁止します。
説明:SCP-CN-1986はサイト-CN-██作業員に対する原因不明の異常現象です。この現象が最初に発見されたレベル██研究員の白██はサイト-CN-██で発生した事故回数を大きく増加させており、SCP-CN-1986-1個体と-1と交流があった人員がサイト-CN-██での事故に巻き込まれるという異常な頻度が特徴です。
統計によれば、事件発生前の人員とSCP-CN-1986-1との間の相互作用の頻度は、人員が関与する事件に巻き込まれる確率に比例します。事故ではSCP-CN-1986-1が致命傷を負うことが多く、SCP-CN-1986-1が対象となった事故の約33%では、SCP-CN-1986-1の関係者は負傷するものの死亡は観測されていません。注目すべきは、事故の約54%はSCP-CN-1986-1個体が他の人員を保護するための負傷、約25%は事故や異常衝突の後にSCP-CN-1986-1が密接な関係を持っていた個人によって引き起こされたことです。SCP-CN-1986-1は、事故後短期間(約3~7日、負傷の程度に応じて)で正常なバイタルサインを回復させた後、2~5日の期間を経て再び同様の事故に巻き込まれることになります。
20██年1月以降、サイトCN-██でのインシデント数は前月に比べて約150%の割合で増加しており、1日に最大1█回の収容違反と██回のテロ攻撃が記録されています。その日にサイトの職員の約85%が致命傷を負いましたが、月末の統計では死傷者は報告されていません。管理者の王██は異常の拡散を防ぐため、サイト-CN-██を解体することに決定しました。この時点でサイト管理者もSCP-CN-1986-1個体に変換されたものと考えられています。
異常が発見された後、サイトCN-██の元スタッフは、その上司を含めすべて記憶処理され、偽の身分を与えられ財団のどのサイトからも離れた通常の仕事に就くことになりました。しかし人事記録によると、約30日以内にサイトCN-██のスタッフが財団サイトに再採用されたこと、サイトの人事監督者への警告が効果的ではなかったこと、スタッフの採用を担当した人事監督者が「この人物を人材確保のために財団に連れてくる必要があり、そうでなければ地域社会にとって危険な人物である」と述べていたことが示されました。具体的な採用理由をさらに問いただすと、採用担当者は深刻な頭痛を引き起こし、実施することができませんでした。
サイト-CN-██に所属していた者が他のサイトに採用された場合、そのサイトのインシデント数は前月比で約150%の割合で増加し、そのサイトの人事ファイルを持っている全ての者が1日から30日の間にSCP-CN-1986-1に変換されることが観測されています。人事ファイルの破棄は効果がないことが証明されていますが、人事ファイルを持っていない職員が人事ファイルを書き込ませないことでSCP-CN-1986-1への変換を効果的に防ぐことができます。SCP-CN-1986-1に変化した人間の異常性を排除する方法や、その人間を効果的に死亡させる方法は見つかっていません。
補遺1986-2 :以下は、サイト管理者王██によるSCP-CN-1986-1個体(前研究員白██、以下SCP-1986-1-A)へのインタビューです。
インタビュー記録1986-1
対象: SCP-1986-1-A。
インタビュアー: サイト管理官 王██。
付記: インタビューは20██年03月01日に、標準人型収容室で行われた。
<記録開始>
王██管理官: 辛かったな、SCP-CN-1986-1。しかし、私は君にこれ以上自殺を試みるのを辞めて欲しい。
SCP-CN-1986-1-A: 管理官、何度も何度も殺されるのはいい経験ではないのはわかっているでしょう。この鳥のフンも漏れないところに放置されているにも関わらず、私は襲われる。あらゆる不可解な事故に巻き込まれ、何度も殺されて、そして目が覚めて……。それがどれだけおぞましい地獄か分かってますか!
王██管理官: ……わかっているよ。しかし、自殺しても死ぬことはないということを知るべきだ。CN-██の人員の大半が君と同じような状況に置かれている。
SCP-CN-1986-1-A: ……何ですって? それで私に'-1'という呼称が付いているんですか? もうみんながこの終わりのない地獄で助け合うか、殺し合うかを繰り返しているの?
王██管理官: 落ち着け、SCP-CN-1986-1。一つ質問がある。君が初めて自分の異常性を発見する前に何が起きた?
SCP-CN-1986-1-A: 何かあったわけでもなく、全てが以前と変わらない普通の日だったと思います。 その日の朝、上司から自分の人事ファイルを編集して文書管理課に提出するように言われました。自分の人事ファイルを書かないとサイト-CN-██最初の月の給料が出ないそうです。提出した後は何があったのか少し目眩がして、大したことはないと思いまるで――まるで何かにうつぶせになったように寝ていました。サイトが攻撃を受けるまでは。その後のことはよくご存知でしょう。
王██管理官: 人事ファイル……?わかった、あの後、サイトの人事ファイルは大々的に編集されたよ。今の異常な状況と何の関係があるのか引き続き調査する。
SCP-CN-1986-1-A: それでは私の残りの人生は、この小さな部屋で過ごすのでしょうか?何日かごとにここにテロリストが来て爆弾を落としたり、発見されてないアノマリーを使ってこのクソみたいな場所を特に攻撃したりするんですか。それとも、父と母と私の女友達を玄関まで送って彼らに銃を向けさせ、頭を撃たれて銃口を塞げと?
王██管理官: ……記憶処理を受け入れ、一般の社会に戻りたいか?私たちはすでに事故に巻き込まれた人物を収容しても、この状況は改善されないことを発見している。現在、これが私たちが考えられる唯一の方法だ。でも、人生の前半は完全に消されてしまうだろうね。
SCP-CN-1986-1-A: ……。
SCP-CN-1986-1-A: ありがとうございます。私をここに閉じ込めて、ずっと死なせてください。
王██管理官: 君の提案を検討しておこう。
補遺1986-3: SCP-CN-1986-1-Aはインタビューの三日後、意識を失った状態で記憶処理を受け、サイト-CN-██の人事ファイルはすべて破棄されました。
補遺1986-4: 記憶処理前のサイト-CN-██前管理官とペネロペ・パナギオトポルス博士とのメール記録
親愛なるパナギオトポルス博士:
こんにちわ。
極東の国の現場で起きた異常事態をお伝えいたしました。この出来事はウイルスに匹敵する速度で広がっており、我々の手に負えぬ何らかの現実改変に違いないと思っています。しかし、発見された異常オブジェクトには現実改変能力を持つ個体は含まれませんでした。前回のSCP-CN-1986-1-Aのインタビューでは、個人が人事ファイルを編集した後に異常が現れ始めたという話があり、つまり人事ファイルの存在によって我々の手に負えない力が我々の研究者に興味を持ち、それが全ての引き金になったのではないでしょうか? 私にはわからないので、できれば何かアドバイスをいただけたらと思います。
敬具
サイト-CN-██ 管理官 王██
親愛なる王██管理官:
まずは、あなたとあなたのサイト職員に起きた悲劇をお見舞い申し上げる。
このような現実改変ーーとりあえずそう呼んでおこうーーは非論理的であり、目的を失っている。私たちのフィクション層においてこの歪曲が誰のためにもならないことは明らかだ。
ああ、私たちのフィクション層においてでだ。
可能性を考えたことはあるか? 確かに、あなたのサイトの職員は小説の登場人物のように個性的で面白い方が多いようだ。
そして、面白いキャラクターの悲劇的な運命を描いた作品は大歓迎。むしろ、職員の人事ファイルが作られた時点で、彼らの「設定」が上位フィクションの中で確立され、上位フィクション層の創作者がそれに固執するだけの面白さがあるみたいだね。
あるいは、あなたのサイト職員の人事ファイルには、上位フィクション層の主体にとってのみ重要なミームが含まれるのかもしれない。彼らにとって「設定」である人事ファイルを読むとその人事ファイルを持つ職員の物語を執筆したいという意欲が湧き、その欲求がミームによって残虐な要素が加えられていくのだろう。
争い、対立し、血を流し、愛し合い殺し合い、そして救い救われる。創作者達はこれらの要素を組み合わせ、あなた方サイト職員らを主人公に説得力あるストーリーを書こうとしているのだろうが、あなた方にとってそれは明らかに不幸なことだ。人事ファイルを削除しようとする試みは結構だが、仮に削除してもどこかで我々の運命を操っている者が様々な経路で知るのを止められるとは思えない。記憶処理をしたところで、書き留めてネットに公開された言葉は色々な手段で必ず見つかってしまう。もし私達がそうであるとするなら、手の届かない小説家にとっても同じだろう。
彼らはいつも、私たちが想像もつかないような方法でキャラクター設定を学び、それを見つけてはモチベーションを込めてあらゆる作品を書いている。
そして、これらの創作者と共に、彼らのコミュニティは成長を続けている。異なる創作者の作品は完全には両立しておらず、ある作品で死んだはずの人物が別の作品では主人公として登場する結果になっているが、これは十分に滑稽ではないだろうか? 恐ろしいのは、もし私の推測が正しい場合、上位層の創作者達がサイトの職員を主人公にした作品を作ろうとする限り、不運な者達は安らかに眠れないということだ。
提案の件についてだが、この状況に直面して何も考えられなくて申し訳ない。
事件に直面したときには、できるだけ退屈に行動をするようにサイトの職員にアドバイスしたほうがいいかもしれない。退屈という基準は単純に定義することは不可能だ。ーーいや、「面白いから」という理由で事故自体に巻き込まれるのは根本的に間違っているし、創作者が「退屈」な話を書く理由も見つからない。
ならば、あなたとあなたのサイトの職員が忘れ去られるか、上位フィクション層の悪魔のような創作者によって、一刻も早く削除されることを祈るしかない。
敬具
ペネロペ・パナギオトポルス