アイテム番号: SCP-1046-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1046-JP-Aは特異性の及ぶ周囲2kmに渡って隔壁を設置して、SCP-1046-JP内が一般人に視認される事を防ぎ、機動部隊は-5("墓守")が巡回警備と設置されたカメラによる監視を行います。SCP-1046-JP-Bは特異性の及ぶ領域を完全に包囲する廃屋に偽装したサイト-81██を建設し、設置されたカメラによるサイト内外の監視を行います。外部からSCP-1046-JP-B領域が観測される事を防ぎます。SCP-1046-JP-Aへの曝露を避けるため、塀内部への侵入には侵入者の確保などの緊急時を除きレベル2以上のクリアランスを持った職員の許可が、またサイト-81██への侵入にはレベル4以上のクリアランスを持った職員の許可が必要です。SCP-1046-JP-Aに一般人が接近した場合は、カバーストーリー『絶滅危惧種の保護区』によって退去させて下さい。内部に侵入した人物はなるべく早く確保し、Aクラス記憶処理を行い解放して下さい。
説明: SCP-1046-JP-Aは███県███山間部に存在する、一辺500mの正方形の領域です。SCP-1046-JP-A内部に存在する物品(以下、対象と表記)が認識される時、物品は静置された一辺5cmの透明な立方体、あるいは立方体が集合して作られた実体であると認識されます。対象が自発的に運動を行う場合、対象の位置の変化を知覚する事は可能ですが、位置の変化を運動として認識する事はできません。認識異常は五感全てで起こる他、センサーや計測機器においても対象があたかも同様の立方体である様な測定結果が得られます。SCP-1046-JP-Aの特異性の為、SCP-1046-JP-A領域内は外見上あらゆる物品が立方体で構成されている様に認識されますが、採取した検体を調査した結果、内部環境そのものにSCP-1046-JP-A以外の異常性は確認されていません。
SCP-1046-JP-BはSCP-1046-JP-Aの中央に存在する、一辺100mの正方形の領域です。SCP-1046-JP-B内部に存在する対象の持つミームは改変され、「箱」として認識される一方対象が持つ他のミームは異常性・非異常性を問わず認識されなくなります。改変されたミームはSCP-1046-JP-B内に存在する人物にのみ認識され、他者へは伝達しません。認識者を通じ、非異常性のミームと同様のプロセスで伝播します。SCP-1046-JP-B外へ伝播した改変ミームは、既存のミームを約██日でSCP-1046-JP-B内に侵入した対象と同様に上書きします。
SCP-1046-JP-Aあるいは-B内に存在しなかった物品がSCP-1046-JP-A/-B内に侵入した場合、オブジェクトの異常性は連続的に進行し、対象がオブジェクトの影響を受けるまでにおよそ15分を要します。特異性は、対象をSCP-1046-JP-A/-B領域外へ取り出し、再度侵入させた場合であっても変化しません。SCP-1046-JP-A/-B範囲外へ対象を移動させた場合、直ちに対象は異常性から脱しますが、SCP-1046-JP-A/-B内においては如何なる方法であっても異常性を取り除く事は出来ません。SCP-1046-JP-Bにより改変され、外へ伝播したミームはクラスA記憶処理によって取り除く事が可能です。
実験記録1046-JP-B-1 - 日付20██/██/██
対象: ボールペン1本、D-1046-JP-2
目的: SCP-1046-JP-Bの特異性の解明
実施方法: ボールペンをSCP-1046-JP-B内に侵入させ、D-1046-JP-2に経過を観察させる。なお、以降の実験を含め実験担当員は領域外からカメラとマイクを用いて指示している。
結果: 15分を待ってD-1046-JP-2に確認したところ、D-1046-JP-2はボールペンを「箱」の一種であると認識するようになっていた。この認識はボールペンがSCP-1046-JP-B外に持ち出されたタイミングで解消された。
分析: D-1046-JP-2の認識異常はミームの汚染によって発生したものと推測されます。カメラ越しにこちらまで認識異常が伝播しないあたり異常ミームとは少し違うようですが。
実験記録1046-JP-B-2 - 日付20██/██/██
対象: ボールペン1本、ヘルメット1つ、D-1046-JP-2
目的: SCP-1046-JP-Bの特異性の解明
実施方法: SCP-1046-JP-Bに曝露しているボールペンとヘルメットをD-1046-JP-2に視認させる実験を行う。実験前後でD-1046-JP-2に、一般的なボールペンとヘルメットが持つ共通点が何であるかという質問を行う。
結果: D-1046-JP-2は視認前には「わからない」、視認後には「どっちも箱だろ?」と回答した。
分析: SCP-1046-JP-Bはあくまでその中にある対象が持つミームを改変しており、観測者の認識に直接働きかけているのでは無いようです。ミームの汚染は直接の認識が条件でしょうか。
実験記録1046-JP-B-3 - 日付20██/██/██
対象: ボールペン1本、ヘルメット1つ、D-1046-JP-2
目的: SCP-1046-JP-Bの特異性の解明
実施方法: SCP-1046-JP-Bに曝露しているボールペンとヘルメットを、D-1046-JP-2に映像を通して観察させた後、一般的なボールペンとヘルメットが持つ共通点が何であるかという質問を行う。
結果: D-1046-JP-2は「箱だって事でしょ」と回答した。
分析: SCP-1046-JP-Bの異常ミームは機器を中継するか否かに関わらないようです。観測者がSCP-1046-JP-B範囲内にいるのが重要なのでしょう。
実験記録1046-JP-B-4 - 日付20██/██/██
対象: D-1046-JP-2
目的: SCP-1046-JP-Bの特異性の解明
実施方法: SCP-1046-JP-B内で、最も一般的な「箱」の特徴をD-1046-JP-2に列挙させる。
結果: D-1046-JP-2は「透明である」、「掌大」、「立方体」などの特徴を持つ箱であると述べた。
分析: 他複数のDクラス職員に対しても同様の実験を行いましたが、全て回答は同一でした。これらはSCP-1046-JP-Aによる認識汚染にも共通する特徴ですね。理由があるのでしょうか。
実験記録1046-JP-B-5 - 日付20██/██/██
対象: リンゴ、D-1046-JP-7
目的: SCP-1046-JP-Bの特異性の解明
実施方法: SCP-███-JPの特異性により、リンゴを[データ削除済]と認識するミーム汚染を受けたDクラス職員に、SCP-1046-JP-B内でリンゴが何に属する物品であるか答えさせる。
結果: D-1046-JP-7は「リンゴは箱であってそれ以外の何物でもない」と回答した。領域内においてはSCP-███-JPの特異性は発生していなかった。
分析: こちらもSCP-1046-JP-Aと同様、他オブジェクトに対して拮抗的に作用しています。また、どうやらこのミーム汚染はその他のミームを上書きし、認識できない様にしていると思われます。
以上の調査で、SCP-1046-JP-AとSCP-1046-JP-Bには幾つか共通する部分が見受けられます。SCP-1046-JP-A、-Bに何らかの関係性があるのは間違いないでしょう。- 御匣博士
補遺: SCP-1046-JP-Aは19██/██/██、別オブジェクトの探索を行っていた機動部隊が「あらゆるものが立方体で構成された森」を発見し、その後SCP-1046-JP-Aの特異性が判明した事で上記の特別収容プロトコルが制定されました。SCP-1046-JP-Aの範囲が判明すると共にその異常性の中心が予測され、発足された機動部隊は-5が探索を行った結果、隊員が銃器の取り扱いを誤り3名の負傷者を出す事案が発生しました。隊員はSCP-1046-JP-Aの特異性について熟知しており、銃器が立方体の集合物と認識された場合の対処も取り決められていた為事案は注目され、詳細な調査が行われました。
結果として、隊員らはSCP-1046-JP-Aとは異なる特異性に曝露し、装備していた銃器が「殺傷能力を持つ武装」であるという非異常的なミームが上書きされた事で、取り扱いを誤った事が判明しました。異常性を発生させる範囲にはSCP-1046-JP-Bが割り当てられました。[データ削除済]。
補遺2: 20██/██/██、SCP-1046-JP-B監視任務に就いていた機動部隊員█名がSCP-1046-JP-Bに曝露していた事が発覚しました。隊員は日常的にSCP-1046-JP-B内の設備を話題にしており、SCP-1046-JP-B影響下の対象が持つ異常ミームが非異常性のミームと同様のプロセスで隊員間に広がったと考えられています。SCP-1046-JP-B外へ拡散したミームにも、SCP-1046-JP-Bの影響を直接受けた場合と同様に他ミームを上書きする異常性が確認されています。
本事案から、SCP-1046-JP-B内の具体的な物品がミームとして拡散する事を防ぐために、SCP-1046-JP-B内の監視は現在行われていません。
補遺3: 20██/██/██、本オブジェクトの主任研究員だった御匣博士を初めとする█名がSCP-1046-JP-Bに曝露している事が発覚しました。博士らはSCP-1046-JP-B自体を「箱」として認識する状態で、クラスA記憶処理を行いSCP-1046-JP-Bに関する知識の一部を消去する事によって回復しました。本事案より、SCP-1046-JP-B自身の持つミームもまた自身の特異性によって改変されており、伝播する事でその異常性を拡散し得ることが示されました。オブジェクトを詳細に把握する事、およびオブジェクトを多数の人間が理解する事はいずれもSCP-1046-JP-Bの収容違反を招く為、オブジェクトクラスはEuclidへ変更され、特別収容プロトコルへのアクセスにクリアランスの制限が設けられました。